一字違いの衝撃(不定冠詞の有無)

外国語で文章を書くとき、ほんの一言が大変な意味の違いを引き起こすことがあります。このコラムは海外事業部会のメンバーが経験をもとに連載します。
一字違いの衝撃(不定冠詞の有無)

 1988年初版のマーク・ピーターセン著「日本人の英語」(岩波新書)の第2章「不定冠詞」に次の二つの英文が例示されています。

  •  Last night, I ate a chicken in the backyard.
  •  Last night, I ate chicken in the backyard.

“a”がついた文とつかない文の違いをどのように感じ取りましたか。
生粋のアメリカ生まれアメリカ育ちで日本の大学で英語を教えるピーターセン氏が米国在住の日本人の友人から受け取った手紙に上段の “a chicken” と書いてあったのだそうです。同氏は “I ate a chicken ….” を見た途端に友人が鶏を一羽捕まえて夜の庭でむしゃむしゃ食べる様を思い浮かべたと言います。
Chicken には一羽、二羽と数える生物としての鶏と、肉屋で重量単位で販売されている食べ物としての鶏肉の意味があります。A chicken はまさに一羽の鶏ですから、I(私)が a chicken(一羽の鶏)を ate(食べた)ことになってしまったのです。本当は「昨晩は裏庭でチキンバーベキューをしました。」というような意味あいのことだったのでしょう。この場合は、“I ate chicken in the backyard.” となります。“a” をつけては意味も状況も全く変わってしまうのです。文法で言えば不定冠詞の有無の違いですね。

会話であれば、相手が聞き返すか、話しているとすぐに通じ合うことですが、文章で書いたものではなかなかそうはいきません。下手をすると意味がうまく通じず商談に失敗するかも知れません。
英文の中の名詞についてはこの例を思い出してもらうときっと役立つと思います。(ZO)


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