読書のすすめ:『ヒトラーの時代』池内 紀・『終わらない戦争』小泉 悠

個人会員 佐々木興吉

 今号では似たようなテ-マの、池内 紀著「ヒトラーの時代」と小泉 悠著「終わらない戦争」の2冊を紹介します。

1.ヒトラーの時代 池内 紀 中央新書 定価(860円+税

ヒットラーの時代

 私の好きなドイツ文学者 池内 紀著「ヒトラーの時代」の紹介です。本誌は2019年7月25日に発行されましたが、著者はその1か月後の8月30日に他界。おそらく最後の著書となったのではないでしょうか。享年79歳。
 楽しみにしていた新本の随筆、紀行などが読めなくなったことは愛読者として楽しみが減り真に寂しい。

 さて、本誌の紹介。泡沫政党の党首、アドルフ・ヒトラーが何故権力の座に急速に駆け上がることができたのか。その時代の世界情勢とドイツの政治情勢、ヒトラーが取った政策とそれを可能にした、いつの時代にでも誰にでもある国民の「小市民」化。事実の検証と紹介は私たちに警鐘を鳴らす一冊となっていますが著者の多数の随筆や紀行文同様 読み易い一冊。
 そしてあとがきに「ドイツ文学者として絶えず気になっていた」とあるようにあたかも遺言のように本誌を残して行きました。

2.終わらない戦争 小泉 悠 文春新書 定価(本体850円+消費税)

終わらない戦争

 2022年にロシアがウクライナに軍事侵攻。現状、西側の支援も滞りがちでウクライナが苦戦しており戦線は膠着しています。本誌は著者が2022年秋~2023年夏頃までに行った対談を再録しています。
 従い現在の戦況ではなく当時の戦況となっていますが、対談相手は高橋杉雄氏はじめ著者と同年代の何れ劣らぬ軍事専門家(著者曰く 著者を含め軍事オタク)。戦争の背景が分かって興味深い。中でもロシア人のプ-チンに対する考え方が紹介され、「えっ そうなんだ」と納得。少し引用が長くなりますが、次のくだりです。

 「我々の側には中露に関して、いつかこんな体制が終わってくれなければ怖くて仕方がない、あるいはこんな体制にみんなが唯々諾々と従っているはずがなく、本当は心の中で強い反感を持ちながら抑えつけられているはずだといった考え方があると思うんです。ですがプ-チンは、ロシア社会の中から出てきた指導者です。週末にダ-チャ(別荘)で釣りをして、そのダ-チャも自分で丸太を担いでつくっている。あまり笑わず、時々乱暴なこともして、身内にはひたすら甘い・・・、これは典型的なロシアの男です。だからロシア人は「こういうおじさんってよくいるよね」と思う人が多くて、プ-チンを悪く思わないんですよ。(中略)そうした国民性は非常に強固に根を張ったものではないでしょうか。」

 対談ゆえ読み易いおすすめの一冊。軍事オタクでなくても。

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