第4回 粋に生き活きクラブの開催報告(平成26年3月)



第4回 粋に生き活きクラブの開催報告

日時 : 2014年3月19日(水) 18:00~21:30
場所 : 産業交流プラザ 3F 第5会議室
演題 : 日本の製造業は生き残れるか
話題提供者 : 個人会員 伊橋俊彦氏
参加者 : 法人会員 1社、 個人会員 12名

 会員相互の懇親と絆を深める場として始まった「粋に生き活きクラブ」は今回で4回目を迎えた。サンドイッチを食べ、缶ビールを飲みながら阿部副理事長の司会で本日の話題提供者は“垢抜けして粋な伊橋さん”の紹介から始まった。
 伊橋氏は山武ハネウエル社(現アズビル社)を経て日本生産性本部で長らく経営コンサルタント、大学院講師などを歴任され、企業経営のコンサルタント、中小企業の従業員教育などで活躍されている方で昨年当会に入会された。


日本の製造業の置かれている環境について

 伊橋氏はまず日本の製造業の置かれている環境について多くのグラフでデータを示しながら、主要製造業の業績推移(売上営業利益率、経常利益率)の変動、次に従業者数・出荷金額の推移では1990年代以降漸減傾向にあることを示された。
 その後、付加価値生産性と労働分配率に触れ、1970年当初50%代であった労働分配率は近年、65%まで上昇し、付加価値生産性は上昇しているものの2007年をピークに漸減傾向で、労務倒産型の傾向を示している。

 景気は立ち直れるかについて景気の先行指標である株価は景気を反映しているが、不安要素も示している。輸出額の推移はアベノミックス以降円安の影響で70兆円まで回復しているが、2007年のピークの80兆円超えまでは回復していない。貿易収支の推移は円安による原油高、海外で製造した製品の日本への逆輸入の増加、原発停止による火力発電所の液化天然ガス輸入等の影響で2011年以降赤字に転落しており憂うべき事態である。
 為替の動向で見ると70円代では国際競争に勝てない。 購買力指数とされるビッグマック指数でみると110円ぐらいと思われるが、100円ぐらいが妥当な線であろう。アジア主要都市の人件費で見ると横浜に比べ、シンガポール、ソウルでは約1/2、上海、大連では約1/10、プノンペン、ムンバイでは約1/30に近い(2010年JETRO調査)。
 ミャンマーへの進出は日本は出遅れ、韓国に後れを取っている。日本人は英語が喋れず、海外への同化が苦手である。グローバル競争では韓国などと比べバイタリティーが足りない。輸入原料価格を原油で見ると2010年以降高止まりである。
 一方製造業の海外シフトを自動車産業で見ると、トヨタが70%近く、ホンダ、日産が80%近く、マツダ、スバルが30%代である。部品メーカーのデンソーはアメリカに進出し、国内メーカーのみならず海外メーカーのコスト競争力を助ける構図にもなっている。

 その他、日本の製造業への足枷になっている要因としては下記が挙げられる。   
①東日本大震災の影響   ②中国、NIESの追い上げ  ③過大生産能力  ④時間短縮
⑤労働力不足  ⑥価格破壊の進行  ⑦市場要求の多様化・高品質の要求   ⑧短納期の要求  ⑨新製品開発の難しさ    ⑩環境対応の必要性   等

変貌を迫られる日本の製造業の取るべき道について

 変貌を迫られる日本の製造業の取るべき道は下記が挙げられる。

1) 技術開発力の充実
2) 生産技術力の充実
トヨタ生産方式のような泥臭い改善、部品メーカーの厳しさは大変であるが・・・
3) 管理技術の充実
① 顧客満足度の向上
② 新製品立ち上げのスピードアップ
③ 変種・変量生産
④ 短納期対応・生産リードタイムの短縮
⑤ さらなるコストダウン
⑥ 品質保証レベルの一層の向上
⑦ 管理システムの革新

に取り組むことが重要と結ばれた。参考として付加価値生産性の向上策も触れられた。

質疑

 その後、若干の質疑が行われ、自由な意見交換が行われた。法人会員として参加されたアナテック社の安藤社長さんからの技術開発力をどう育てるかとの議論には、

1) 何を売りにするかを考え、特色を作る。
例えば金属加工業であれば精密さを追求するか或いは他社では切削できないような技術を持つかなど他社が容易には追随ができないような技術を育てること。
2) 付加価値生産性をどう上げるかも重要である。
① 高付加価値商品の開発 ② 変動費の削減 ③ 生産効率の向上 ④ 生産効率の向上  ⑤ 少数精鋭主義の徹底(固定費削減) ⑥ モラール向上など
3) 顧客のニーズは何かに関心を持ち、ニーズと自社の得意技術を結びつけること

 

新入個人会員 立林氏の紹介について

 途中で新しく産業クラスターに入会された立林恭一さんの自己紹介が行われた。立林さんは横浜市金沢区にある車輛メーカーに10年勤務された後、外国企業2社の営業などを経験された。定年後、得意の英語を活用したいとのことで当会に入会された由である。

 その後、日本の将来について第三次産業への就業人口は増加の一途をたどっているが、製造業の位置図けは如何など、自由気儘の議論で予定時間を大幅に超過し、21時半にお開きとなった。

解説

1) 付加価値額(産業別財務データハンドブック・日本政策投資銀行)
=営業利益+人件費・労務費+賃借料+租税公課+特許使用料+減価償却費
2) 付加価値額(中小企業実態基本調査に基づく経営・原価指標)
=労務費・人件費+減価償却費+地代家賃+従業員教育費+租税公課+支払利息・割引料+経常利益
3) ビッグマック指数
英国の経済紙「エコノミスト」が発表するマクドナルドのビッグマックの価格によって各国の通貨の購買力を比較するものをいう。これは、購買力平価の考え方に基づき、マクドナルドが世界100カ国以上で販売しているビッグマックの価格を使って算出したもので、1986年に考案されて以来、同誌で毎年、各国のビッグマックのドル建て価格が報告されている。
(槌谷記、伊橋監修)

  


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