シリーズ DX化を進めたいけれど その6

シリーズ 「デジタル思考で目指すDX」

  シリーズ DX化を進めたいけれど その6

 テーマ自体が、非常に広範囲であるため、まずは身近な領域からと自分が経験してきたテーマから書き始めたが、シリーズ5まで世間話的な内容になってしまった。元来この分野の研究者ではなく、学生時代に機械工学系で自動制御について学び、卒業後 製造業で作業の設備化や自動化に取り組んできた。今から50年以前の日本が戦後復興からモノづくりでグローバル成長へ向かう入り口であった。
 当時の日本のモノづくりは、日本的な手作業(後に職人技)により、“安価で、良い品質”を売りに多くの製品を米国へそして世界に輸出していった。生産設備も数値制御やアナログ的なフィードバック制御で一部自動化を進めて、1968年にGDP世界2位までの経済成長を達成し、2010年に中国に抜かれるまで「モノづくりの日本」として世界の経済大国であった。
 その間、米国は世界の盟主=経済大国として金融、技術面に力を入れてきた。特にデジタル技術の分野では、軍事技術や宇宙関連技術との関係も含めて圧倒的な強さを示し、2000年頃からデジタル技術を活用した情報、サイバー&フィジカルとさらにはAI技術を活用し高い生産性を追求する文化革命に近い覇者となっている。コンピューター技術の覇権によりGAFAに富が集中する仕組みが構築されてきている。さらには、Tesla、NVIDIA、SpaceX、Zoomなど、米国発でデジタル技術を活用して急速に新たな市場拡大、利用者が急激に増加してきている。これらの企業は、GAFAに続く新たなテクノロジーリーダーとして注目されている。

 総務省では、我が国のデジタル技術展開の姿を評価し、改革を加速すべく、下記のように定義している。

  1. デジタイゼーション(Digitization):
     定義:アナログデータをデジタルデータに変換すること
     : 紙の書類をスキャンして電子データにすること
     目的: データの保存や検索を容易にし、効率化を図る
  2. デジタライゼーション(Digitalization)
     定義: デジタル技術を活用して業務プロセスを改善すること
     : RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、手作業の業務を自動化  すること
     目的: 業務の効率化や生産性の向上を目指す
  3. DX(デジタルトランスフォーメーション、Digital Transformation):
     定義: デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業文化を根本的に変革すること
     : 技術を駆使して新しいサービスや製品を開発し、市場に新たな 価値を提供する
     目的: 競争力の強化と持続的な成長を実現する
DX化 その6

1. デジタイゼーションに取組む

 デジタル化の進展に伴い、企業がどのようにデジタル技術を活用していくかを示している。まずはデジタイゼーションから始め、次にデジタライゼーションを経て、最終的にDXを目指すという流れとなっている。ここで問題になっているのは、非常に短期間に大きな変化が起きていることである。現在の社会で起きていることは、情報としても、現地・現物が同時に発生し、伝搬していることである。従来は情報伝達についても、伝搬速度に大きな差があった。そのため、特に私が経験してきたモノづくりの自動制御の時代では、情報の速度のバラツキが入出力のバラツキとして大変悩まされたものであった。

 デジタル技術の急激な進歩はあらゆる情報をデータとして記録し、現在起きている状況を情報集約、分析してバーチャルリアリティの精度を向上することである。このことで例えば、絶対に事故の起きない自動運転技術を可能にするとか、モノづくりの世界でいえば量産するときには、最適なコストで計画通りに生産を実現する生産ラインをシステム上で可能とし、現実の世界で、最適な生産ラインを実現できるそのような社会が近づいてきている。昔、子供のころ夢にみたアニメーションの世界、自動運転、ロボット、空飛ぶ自動車、宇宙旅行、完璧なバケーション、世界中の自由旅行・・・書き出せばきりがない世界が、従来表現ができなかったことを一つ一つデータ化し再現することが可能になってきている。紙にして埋もれていた多くの情報をデジタル化によって生きた情報として、再現・活用することができる。人が整理するには膨大な情報もAI技術を活用すれば、偏差値70点以上のレベルで瞬時に整理してくれる。当然内容の吟味は必要だが。

デジタイゼーションのステップ

  1. 現状の把握:
    まず、どの業務や情報がアナログで処理されているかを確認する
    例: 紙の書類、手書きの記録、物理的なファイルなど
  2. デジタル化の対象を選定:
    デジタル化する対象を決定する。優先順位をつけると効果的
    例: 経費精算の伝票、顧客情報の管理、会議の議事録など      
  3. 適切なツールの選定:
    デジタル化に必要なツールやソフトウェアを選ぶ
    例: スキャナー、クラウドストレージ、デジタル署名ツールなど
  4. デジタル化の実施:
    選定したツールを使って、アナログデータをデジタルデータに変換する
    例: 紙の書類をスキャンしてPDF化、
     手書きの記録をデジタルフォームに入力
  5. デジタルデータの管理:
    デジタル化したデータを整理し、適切に管理する
    例: クラウドストレージに保存しアクセス権限を設定、情報をデジタル化して収集する、処理する装置は高性能化が図られ、身近なスマートフォンは何年か前のパソコンと同程度の性能を持ち、一眼レフのカメラに近い性能で動画や写真を撮影することができる。さらに高速通信回線により大型コンピュータ/データーサーバーに情報を送るなど、デジタル情報の端末として活用されている。

 特にこの分野の活用については、年代ジェネレーションギャップやITリテラシーの育成が大切な要件となる。

ITリテラシーの主要な要素

  1. 基本的なコンピュータ操作:コンピュータの基本操作やソフトウェアの使用方法を理解すること
  2. ンターネットの利用: ウェブブラウジング、メールの送受信、オンラインリソースの検索と利用。
  3. デジタルセキュリティ: パスワード管理、ウイルス対策、フィッシング詐欺の認識と対策
  4. データ管理: データの保存、整理、バックアップの方法。
  5. ソフトウェアの利用: ワードプロセッサ、スプレッドシート、プレゼンテーションソフトなどのオフィスソフトの使用

ITリテラシーの重要性

  1. 職業能力の向上: 多くの職場でITスキルが求められるため、ITリテラシーが高いと就職やキャリアアップに有利。
  2. 効率的な情報管理: デジタルツールを使いこなすことで、情報の整理や共有が効率的に行える。
  3. 安全なオンライン活動: デジタルセキュリティの知識があると、オンライン上でのトラブルを避けることができる。
  4. 教育の質の向上: 学生や教員がITリテラシーを持つことで、デジタル教材やオンラインリソースを効果的に活用できる

 ITリテラシーを向上させるためには、継続的な学習と実践が重要となる。例えば、オンラインコースやワークショップに参加することで、最新の技術やツールについて学ぶことができる。

効果の評価と改善
 デジタル化の効果を評価し、必要に応じて改善を行う。
 例: 作業時間の短縮、エラーの減少、データの検索性向上など。

 デジタイゼーションは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の第一歩。 まずは小さな部分から始めて、徐々に範囲を広げていくと良い。

 次号では、デジタイゼイションで収集したデジタル技術を加工して、新しい仕事を構築していくデジタライゼイションについて学んでいく。


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