シリーズDX化を進めたいけれど その3

シリーズ 「デジタル思考で目指すDX」

  シリーズDX化を進めたいけれど その3
~どうすればよいのか?
~どのくらいの投資が必要か?
~DX化の意味は?

DX/デジタル研究会 伊澤 俊夫

2.デジタル化とは

 世界中で急速にデジタル技術が進む状況下にあって、何故か日本のデジタル技術の活用は遅れていると言われている。しかし、デジタル技術の活用の歴史を振り返ってみると日本の貢献した部分は非常に多い。そもそも、デジタル化技術の歴史は19世紀後半の電話と電報の発明が、音声や文字などの情報を電気信号に変換する技術の基礎となったと言われている。
 デジタル技術とは、情報を0と1の二進数で表現し計算や通信などに利用する技術のことで、様々な発明や発展の集合であり、最近では身の回りに意識できないほどの技術が活用されている。日本が貢献してきた部分と近年遅れをとっているところを知るために、簡単にその歴史を遡ってみた。

  • 1940年代:第二次世界大戦中に、暗号解読や弾道計算などの目的で、世界各地で電子式のデジタルコンピュータが開発され、ドイツのZ3、イギリスのコロッサス、米国のENIACなどがある。
  • 1936年:イギリスの数学者アラン・チューリングが、任意の計算を行える理論上の機械「チューリングマシン」を提案した。これは、現代のコンピュータの原型となった。
  • 1950年代:トランジスタや集積回路などの発明により、コンピュータの小型化や高速化が進んだ。また、プログラミング言語やオペレーティングシステムなどのソフトウェアの発展もあった。
  • 1960年代:インターネットの起源となる、米国の国防総省が資金提供したパケット通信のネットワーク「ARPAnet」が運用を開始した。
  • 1970年代:パーソナルコンピュータやマイクロプロセッサなどの登場により、一般の人々もコンピュータを使えるようになり、ビデオゲームや電卓などのデジタル機器も普及した。
  • 1980年代:グラフィカルユーザーインターフェースやマウスなどの発明により、コンピュータの操作が簡単になった。インターネットの商用化やワールドワイドウェブの誕生などにより、情報のやり取りが容易になった。
  • 1990年代:携帯電話やデジタルカメラなどのデジタル機器が急速に普及し、またインターネットの普及に伴い、電子メールやウェブサイト、オンラインショッピングなどのサービスが広まった。
  • 2000年代以降:スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスが登場し、インターネットに常に接続できるようになった。また、クラウドコンピューティングやビッグデータ、人工知能などの技術が発展し、デジタル化の進展が加速しました。     (Wikipedia 情報化時代 参照)

 1970年代以降の日本の高度経済成長時代において「モノ」の量産技術分野では、世界の先端を走っていった。しかし2000年以降の情報の活用の時代になって、グローバル展開で遅れをとっている。
デジタル化➡DX化、「モノからコトへ」の遅れを考えるときに、これから再び日本が目指すべき方向が分かってくると考えている。

2-1 デジタル技術の種類

 デジタル技術はコンピュータ技術と通信技術の進歩に合わせて活用の場が広がってきた。その技術分野が広いので、以下の分野に分けて身近な活用方法の検討を進めていく。
  ① 数値データ処理技術
  ② 文字・文書などのテキスト形式技術
  ③ 音声・映像処理技術

①  数値データ処理技術
 コンピュータの得意とする数値計算技術を使って、身近な家庭電化製品から製造業の設備制御等に利用されている。下図の制御応用例を見れば、デジタル制御はあらゆるところで使用されているのである。 (菅井賢 氏(STマイクロエレクトロニクス),EDN Japanの資料)

数値データ処理技術


 数値データ処理の技術と通信技術が融合されて、単なる設備や装置の制御だけではなく、その設備・装置の稼働状況や、その周辺情報の数値データを積極的に収集することによってその数値情報の分析から多くの有効情報を構築し見える化、再利用することで単なる部分制御ではなく工場全体の制御・管理に数値データを活用していく。いわゆるIoT技術の展開であり、さらには、ファクトリー、地域社会全体(ソサエティー)の数値制御・情報の見える化の推進が日本の得意分野のDX化となると考える。

【企業の数値データの活用手順】

企業の数値データの活用

1) 作業要素の自動化  デジタルツールの活用
2) 機械装置の自動化  IoT技術の活用
3) SCMサプライチェーンの情報の見える化
   在庫量の把握など 数値データ収取
4) 工場管理上必要な数値情報の集計と見える化
5) 会社組織全体の数値データ共有化を考える

注意事項―数値情報もコスト 無駄な情報は収集しない 情報の整理・整頓が必要 極力モノと情報を一体化する 情報だけで処理をしない。

 数値データの活用技術は、韓国・中国の追随が厳しい分野であるが、日本は先行分野でもある数値データの活用は、規模が小さければPC―Excelを使っていつでも学習し実行できる。国内の技術のすそ野が広いため、国内異業種の連携を含めて積極的展開を進めて欲しい。
 また、理論解析やシミュレーション技術の分野では欧米に対して遅れている分野もある。この分野では、教育や国家的支援も必要であろう。

 次回は②文字・文書のデータ 情報の活用について考察していく。


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