シリーズDX化を進めたいけれど その2

シリーズ 「デジタル思考で目指すDX」

  シリーズDX化を進めたいけれど その2 

~どうすればよいのか?
~どのくらいの投資が必要か?
~DX化の意味は?

DX/デジタル研究会 伊澤 俊夫

 <序章>

 デジタル技術の専門家でもない私が、大胆にもこのような難しいテーマに挑戦しようと考えたのは、デジタライゼーション、DX化の取組に悩まれている多くの中小企業の経営者やこれから社会を動かしていく世代に参考になる話題を提供しようと考えたことからはじまっている。幸いにも、当会にはH社で長年コンピュータの研究開発に取組んでこられたシニアエンジニアや技術活用の経験者が参加している。コロナパンデミックによる行動制限期間中にZoomを活用して、毎週2時間の勉強会が続けられていて、私の浅薄な知識も補正され、ある程度皆様のご参考になるのではと算段したしだいである。

 デジタル技術を学ぶときに一番大変なことは、英語略字や翻訳されたカタカナ文字の意味を理解することで、大変時間がかかってしまう。歴史的に見ても、残念ながら新しい技術分野への挑戦は、昔から欧米の研究者が開発先行し、グローバルスタンダードとしてきた。しかし、私たちの先輩は、少ない資源を有効に活用する知恵と工夫、勤勉さで第二次世界大戦後の廃墟の中からも驚異的な復興を果たし、20世紀末頃には、米国に次ぐ世界第二位の経済大国になった。その原動力になったのが、戦後の需要➡消費を支える大量生産/工業化とそれを実現する技術とものづくり力(現場力)であった。
 高度成長期に日本の大手企業はグローバル展開を進めたが、そこでは地産地消として人件費の安さを求めて、日本国内で支えてきた中小企業のものづくり力は放置されてきた。この状態は、戦前に米国で始まった大量生産=大量消費文化を支えた製造業がグローバル展開により衰退したのと似た状態であった。
 ところが、米国は強大な資源保有国であり、世界中の資金の流通拠点であり世界の盟主であり続けた。
 さらに、戦中から研究開発が進められてきたコンピュータ技術の進歩は凄まじく(注1)、加えて通信技術の進歩により、2000年以降急速に情報化時代に突入した。金融と情報は表裏一体の関係にあって、情報処理の高度化(AI技術)や高速化により益々、世界は経済活動の一体化が進んで行くと思われる。

 さて、「デジタル思考で目指すDX」と分かりにくいタイトルで始めるこのシリーズだが、DXを目指していく事はもはや世の中の趨勢であり、避けていく事はできないと思われる。2018年に、経済産業省が停滞している経済の活性化を図るために、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」として提唱。
 「DX経営」は、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することを目的としている。

 そこで、その取組段階を4段階に層別定義して、2021年に現状調査をおこなった。ようやくデジタル技術の活用を始めた企業が、50%を超えた段階との結果であった。

ディジタル化の取組段階

 特に、大手企業は別として日本の97%を占める中小企業の多くが、従来からのアナログ状態であることがわかる。デジタル化の遅れが日本企業の生産性の低さの原因とも言われている。
 

1.どうすればよいか?

 世の中の動向を見れば、デジタル化に関しては既に遅いくらいの状況にあるが、コロナパンデミックの影響や世界経済の変化・混乱の状況見るとき、身の丈にあった所からすぐに取り組んで行くことが大切だ。これから生まれ、育っていく若い世代はデジタル技術が当たり前の世界で過ごしていくことで、考え方が自然にデジタル思考になっていくが、いま現役時代の特に中高年以上の年代は、日本の小さなコミュニティーの中でその連続性の維持を求められる、すなわちアナログ思考の極みの様な世代の再教育・リスキルが課題となっている。

1-1 アナログとデジタルの違い

 対義的には以下の様に比喩的に表現される。

 デジタルとアナログは不連続か、連続か?を語義としているが、もともと、島国で小さな集団で生活してきた日本人は、その集団の連続性を維持することを大切にしてきた。一方、人の交流・流動性が高かった大陸系の民族は集団より、個を大切にしてその集合=組織力の強化を図ってきた。そのような組織・風土の適応障害の課題が大きいのである。

 1-2 デジタル変革の障壁

 日本のデジタル化の遅れの要因は、技術的要因より文化・組織・人材による課題が多いとの分析レポートも報告されている。(マッキンゼーのグローバル企業2135名の経営者へのインタビューより)

 技術的課題より、文化・組織的な課題がデジタル推進のために必要との分析結果から、先ず経営者が
変革のリーダーとして意識改革に取り組むことで、先行する企業や世界的な市場で競争することができると思う。ソサエティー5.0で目指す「サイバー&フィジカル」の世界で、伝統的な現場力をデータ化しコンピュータ技術を活用した効率的な運用が出来るように活動して行きたい。

1-3 情報は集めれば価値がある?

 デジタル技術の活用で、様々な分野で技術の変革が始まった。特に電子式計算機として開発されたコンピュータ関連技術の進歩は凄まじく、高性能・高速化と小型化・低価格化の追求で人の道具から人に変わる道具に進化し続けている。さらに、通信技術も高速・大容量の通信が可能となっての情報爆発の状態になっている。情報を集めれば価値があると言われているが、種々雑多な情報はただ情報量に埋もれてしまうだけで、そこから有益な価値は生まれてこない。
 技術系のデータは、その技術課題に応じて必要な要素に限定してデータを収集し、それを計算機-高性能コンピュータで計算して、解を求めていた。高性能のコンピュータが高価であった20世紀においては
 少ないコンピュータ時間で解が出る様に実験計画をつくり工夫できることが、エンジニアに求められる条件でもあった。一方アナログ情報が多い営業情報や数値化しにくいデザイン系の情報、一般的な通信記録などは、コンピュータ活用による効率化からほど遠い状態であった。そこでアナログ情報のまま通信する画像処理やファクシミリなど技術が特にガラパゴス化した日本では進化した時代であった。昭和の高度経済成長期は、現在の世界的なデジタル化、DXの流れの疎外要因にすらなっている。
 そこで、DX化に取組んでいる企業、特に大手企業ではビジネス全体を再構築(BPR=ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)して、ビジネスフローをツリー構成にし、コンピュータを活用してERPシステム(エンタープライズ リソース プランニング)により、企業資源「人・モノ・カネ」をプラットフォーム上で最大有効の活用を図ることを進めているが、多くのシステム投資を必要としているため、それでは企業規模の小さい中小企業では、デジタル化、DXは出来ないことになるのか?

 その答えは、身の丈に合った活動から DX化は始まる
 先ずは、お金をかけずに出来る事
 自分の身の回りで 必要な情報の整理・整頓からである

                                次号へ続く


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