マーケッティング入門:第6回 マーケティングの手順と手法

サラリーマンOBが独自の視点で解説する
マーケティング入門

第6回 マーケティングの手順と手法

個人会員 金野 成男

図1
図1

 マーケッティング手法の続きです。
 先ずSWOT分析から行きましょう。

SWOT分析: Strength=強み、Weakness=弱み、Opportunity=機会、Threat=脅威、即ち、自社(内部環境)の強みと弱み、周囲(外部環境)の機会と脅威を図-1の表に箇条書きに整理することで、自社の状況を把握しやすくなります。ブレインストーミングとKJ法で洗い出し整理してみるのも面白いでしょう。

 自社のSWOTが分かったら、自社の特性にあった攻略すべき市場を捜しましょう。

STP分析:まず、市場を市場特性に合わせて分類し(Segmentation)、分類した市場のどの市場が自社の特性に合っているか比較し、対象とすべき市場を絞り(Targeting)、狙った市場を攻略するための立ち位置(Positioning)を決める、一連の戦略立案プロセスです。

  1. セグメンテーション:市場分割のパラメーターとして、消費財の場合、性別、年齢、収入、嗜好、など、B2Bでは業種、地域、人口などいろいろ考えられます。よく言われている市場分割方法は、国、宗教など地理的属性、人口、年齢、学歴など人口統計的属性、ライフスタイル、価値観など心理学的属性の3種類ありますが、それらにとらわれることなく、自社の強みが生きる様なセグメンテーションをすることです。
  2. ターゲッティング:分割した市場のどのセグメントの顧客にアタックするか、ねらい目の市場を決めることです。SWOT分析で分かった自社の特性、自社の強みが生きる市場を選択します。
    セグメンテーションは図-2のような表に纏めると、ターゲッティングがしやすいでしょう。
図2
図2
  1. ポジショニング:ねらい目の市場を攻略するために、自社の位置づけ/位置取りのことです。ポジショニングにもいろいろなやり方があり、自社の特性が生きるポジショニングの仕方・切り口で良いのですが、ここではマイケル・ポッターのポジショニングを紹介します。図-3に示すように、市場で競争優位を得る為の3つの位置取り戦略が提案されています。
     
    1. コストリーダーシップ:競合より低価格で市場シェアを支配する、強者の戦略です。
    2. 差別化:競合に無い機能・特徴により高くても買ってもらえる、2番手以降の企業の戦略です。
    3. 集中(ニッチ):さらに絞った狭い市場で、No.1またはオンリーワンになる戦略です。経営資源の限られた弱者の戦略とも言えます。
図3
図3

 実際のマーケッティング戦略は、複雑に色々な要素が交じり合ったものになりますが、基本の立ち位置を考えるときは、このようにシンプルに考えた方が自社の本質が見える気がします。

 各種分析ができ、狙うべき市場も決まりましたので、いよいよマーケッティング戦略立案です。
マーケッティングミックスマーケティングミックスは、マーケティング戦略において、望ましい反応を市場から引き出すために、マーケティング・ツールを組み合わせることである。つまり、企業や非営利組織が顧客や生活者に商品やサービスの販売をしたり、何かを遂行したりするために、マーケティングの使用可能な複数の手段を組み合わせて戦略をたて、計画、実施すること。(疲れたので、Wikipediaから引用しました。)マーケッティングミックス(M-M)においてよく4P分析が使われます。また、4Pを顧客側の視点で分析したものが4C分析です。

4P分析:Product(製品)、Price(価格)、Place(場所/提供方法)、Promotion(販売促進)の4つのPについて、各々具体的な戦略を立てます。そのときに、顧客視点に立った4C(Customer Value〔顧客価値〕、Cost〔顧客にとってのコスト〕、Convenience〔利便性〕、Communication〔コミュニケーション}〕と対比して図-4のように纏めると、考えやすいでしょう。

図4 4P分析と4C
図4 4P分析と4C

 前号で示した、マーケッティングの手順R-STP-MM-I-CのRからMMまで簡単に紹介してきました。IとCは実施とチェックなので省略するとして、これでマーケッティング手順と主要な手法の紹介は終わります。詳細は、専門家が書いた本やネットをご覧ください。

 これらの手法は、考えを整理するのに有効な方法ですが、あまり一生懸命やりすぎると、フォームを埋まる前に疲れきってしまうので、気楽に皆でワイワイ楽しく繰り返しやる方が効果的です。地方活性には「余所者、若者、馬鹿者」が必要とよく言われますが、マーケッティングも同様に多面的に固定観念に囚われないで物事を見る姿勢が重要です。

 第3回で紹介したように、マーケッティングの目的は、
 「(マーケッティングの理想は、)販売を不要とすることである。(マーケッティングが目指すものは、)顧客を理解し製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにする」(ドラッカー)
ことです。これまで、紹介してきた手法を使うことで、自社・自社の製品/サービスの強み・弱み及び、顧客・市場の求めるもの(顧客価値)がより明確になり、中小企業でも顧客にとって必要不可欠のクリティカルサプライヤーになることができます。また、商品に合った市場攻略、市場に合った商品開発に役立つと確信します。
 志を高く持って、わが社が無ければ日本の経済が廻らない位の心意気でマーケッティング戦略を考えてください。

 今回で従来型のアナログマーケッティングについての初級講座は終わりです。次回は、デジタルマーケッティング(マーケッティングオートメーション)を紹介いたします。


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