読書のすすめ:『尚、赫々たれ 立花宗茂残照』

個人会員 佐々木與吉

『尚、赫々たれ 立花宗茂残照』
羽鳥好之 早川書房
2,200円(税込み)

  柳川藩主 立花宗茂が関ヶ原の戦いで西軍に属し敗北。その後、家康から唯一西軍で旧領地の大名に復領され、第2代将軍秀忠の御伽衆として、第3代家光の相伴衆として仕える。

 将軍家光に問われ語る天下分け目の戦い。戦いに望んだ東軍 家康の戦い前の状況判断と心境とは。また、ともに西軍だった毛利秀元と語る東軍勝利の真相とは。登場人物が語る言葉から、その心の襞や心境をつづる手法は見事に成功している。上下関係・権力構造は勿論 武士の付き合いは現代のように情報を安易に得ることができなかった時代、相手が何を考えているか、いたのか。対面での言葉や話しぶり、書簡からしか推し量るしかなかった時代、登場人物の心の内をよく書いている。訪問したり、されたりの折の手土産や贈り物の選択、言辞、応接なども多分そうだったんだろうなと思わせる。
 家康の孫、豊臣秀頼の妻 千姫。即ち秀忠の娘、将軍家光の姉。大阪城落城から逃がされた後の天樹院と宗茂の淡い恋慕がまじる交流は事実はどうあれ物語に彩りを添えていると云えようか。
時代ものの代表 藤沢周平作品とは同じ「時代のもの」とは云えジャンルが違い、ミステリ-の気配が浮遊する物語として一気に読み終える快走感がある。

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