テクニカルノート「チャット型AIソフトBingとの対話体験~勘違いをするBing~」

テクニカルノート:人工知能シリーズ


その1 チャット型AIソフトBingとの対話体験
~勘違いをするBing~

個人会員 新井 全勝

 概要

 チャット型AIソフトBingは、最近注目されている、回答を自動的に生成する対話型AIソフトであり、マイクロソフトから提供されている。小生はBingと対話をしたり相談を持ちかけたりなど、ときどき使っている。

 ある日、ゼロックスのパロアルト研究所が非営利の独立研究開発機関、SRI(Stanford Research Institute)インターナショナルに寄贈されるというニュース1)を知り、早速Bingに意見・感想を聞いてみることにした。

 ゼロックスのパロアルト研究所(Palo Alto Research Center、略称PARC)は、GUI(Graphical User Interface)やイーサネットLANの先駆的な研究で知られる研究所である。
 現代のコンピュータに採用されているGUIベースの先駆的なオペレーティングシステムを開発し、当時のミニコンピュータに搭載した。そのシステムは「ALTO」と名付けられるが、もともとはSRIのNLS(oN Line System)をベースにPARCが試作的に開発したものである。
 
 なお、東芝のノートパソコン「dynabook」の名称は、PARCのアラン・ケイが考えたものであり、それを東芝が譲ってもらったのである。

注1)(あの「パロアルト研究所」がXeroxのもとを離れる MacやPCなど現代コンピュータの“聖地” – ITmedia NEWS

Bingとの対話

 以下の対話は、AIチャット「Bing」との対話の記録である。小生の質問ははしょっているところがあるが、Bingの回答はそのままである。

小生:「PARCがSRIに寄贈されることを知っていますか? 」
Bing:「はい、知っています。ゼロックスは、傘下のパロアルト研究所(PARC)を非営利研究機関のSRIインターナショナルに寄贈すると、2023年4月24日に発表しました¹ ²。これにより、ゼロックスは印刷、デジタル、ITサービスの革新に専念できるようになり、PARCはSRIと協力してさらなる技術革新を目指すことになりました¹ ²。PARCは1970年に創設され、イーサネット、レーザー印刷、GUIなどの技術を開発したことで知られています¹。SRIインターナショナルは1946年にスタンフォード大学が設立したもので、当時の名称はStanford Research Instituteでした¹ ²。」
注)Bingが参照したWebサイト: 1. news.yahoo.co.jp 2. msn.com 3. gamingdeputy.com 4. japan.zdnet.com

小生:「どう思いますか? 」
Bing:「私は、PARCのSRIへの寄贈は、両者にとって有益なものだと思います。PARCはSRIの豊富な経験とネットワークを活用して、より多くの研究機会と資金を得ることができます。SRIはPARCの優秀な人材と技術を取り込んで、自らの研究力を高めることができます。ゼロックスはPARCからの負担を軽減して、自社の事業に集中することができます。このように、寄贈は三者三様の利益をもたらすと考えます。」

小生:「考えてみると、PARCで開発され、名声を博したALTOはSRIのNLSをベースにしたものであり、その意味では故郷に戻ったとも考えられるのですね。」
Bing:「そうですね。ALTOは、SRIのダグラス・エンゲルバートが開発したNLS(oN-Line System)に触発されて、ゼロックスのパロアルト研究所で考案されたコンピュータです¹。NLSは、マウスやウィンドウ、ハイパーテキストなどのGUIの先駆けとなるシステムでした。ALTOは、NLSのコンセプトを引き継ぎながら、より小型で高性能なコンピュータを目指しました¹。その意味では、ALTOはNLSの故郷であるSRIに戻ったと言えるかもしれませんね。」
注)Bingが参照したWebサイト 1. ja.wikipedia.org 2. suzuki.co.jp 3. mitomoha.hatenablog.com

小生:「ALTOとNLSの違いは何ですか? 」
Bing:「ALTOとNLSの違いは、ALTOはスズキの軽自動車の名前で、NLSはダグラス・エンゲルバートが開発したコンピュータシステムの名前です。1 2 3

 ALTOは1979年に発売された軽ボンネットバンで、2021年12月には9代目となる新型モデルが登場しました4。ディスプレイオーディオやADASなどの先進的な機能を備えています1

 NLSは1960年代にスタンフォード研究所のオーグメンテイション研究センターで設計・開発されたマルチユーザー連携システムで、ハイパーテキストやマウスなどの革新的なコンセプトを実用化しました5 。1968年12月9日にサンフランシスコで実演されたデモは「すべてのデモの母」と呼ばれています2

注)Bingが参照したWebサイト  1. car.watch.impress.co.jp 2. ja.wikipedia.org 3. computerhope.com 4. ja.wikipedia.org 5. en.wikipedia.org 6. ja.wikipedia.org 7. weblio.jp

小生:「ALTOはスズキの軽自動車の名前かもしれませんが、ここではPARCで開発された小型コンピュータでよいのではないですか? 」
Bing:「はい、ALTOはスズキの軽自動車の名前かもしれませんが、ここではPARCで開発された小型コンピュータでよいと思います。ALTOは、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)をベースにしたオペレーティングシステム(OS)をサポートするように設計された最初のコンピュータで、1973年に発表されました1。ALTOは、マウスやウィンドウなどの画期的な機能を備えており、後のパーソナルコンピュータの先駆けとなりました2。ALTOは商品化されませんでしたが、ゼロックスやAppleなどの他の企業に大きな影響を与えました3
注)Bingが参照したWebサイト 1. ja.wikipedia.org 2. wired.jp 3. en.wikipedia.org  

 以上はBingとの対話記録ですが、この中で、「ALTOは1979年に発売された軽ボンネットバン……」という返事が返ってきたときには、AIソフトも勘違いをするということがあるのかと非常に驚きました。まったく予期しないことでありました。

勘違いの要因
 この勘違いを起こしそうな要因について考察してみましょう。2つの要因が考えられます。
 一つは、「ALTOとNLSとの違いは何ですか? 」という質問をしたことにあると思います。この質問によって、「ALTO」と「NLS」という言葉について新たに検索が発生し、文脈を忘れて「ALTO」=スズキの軽自動車に転換してしまったものと推測されます。
 もう一つは、「ALTO」の意味として2つの選択肢があり、Bingにとってはどちらも価値のあるものであったということが推測されます。その結果、新たな質問が来ると、文脈が忘れ去られてしまったと推測されます。「NLS」という言葉は、通常ならば「OLS」という略号になっているべきなのですが、そうしなかったところに名称付けの賢明さがあったと言えるのかもしれません。

 以上から、選択肢が複数ある言葉に対しては、質問の展開を十分に考えてしないと勘違い回答が返ってくることがあると考えられます。この視点をAIの問題点として指摘しているものついて、今のところ知りませんが、利用さえる際には覚えておくべき視点であり、回答の確認が要請される点でもあります。


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