『読書のススメ』 ―あなたのお薦めの本を教えて下さいー

『読書のススメ』
―あなたのお薦めの本を教えて下さいー 

広報チーム 仲田 清

 今月から始める新しいコラムです。読者の皆さんが読んで、面白かった、仕事に役立つ、教養を深める、くだらないけど息抜きに・・などお薦めの本をご紹介下さい。

本の紹介はこちら

 今回は、“隗より始めよ”で、私から2冊紹介させていただきます。

 1冊目は、小野不由美の異世界ファンタジー小説「十二国記」(新潮文庫)シリーズです。
 1991年に1冊目「魔性の子」が発行されて以来、2019年発行の「白銀(はくぎん)の墟(おか) 玄(くろ)の月(つき)」下巻まで全15巻、総発行部数約1280部の超人気シリーズで、「白銀・・・」が発行された時には公式サイトのサイトがダウンするなど社会現象となりました。
 Wikipediaの説明を引用すると“『十二国記』は、神仙や妖魔の存在する中国風の異世界を舞台にしたファンタジー小説シリーズである。この異世界には十二の国が存在し、各国は王政国家である。麒麟が天の意思を受けて王を選び、王は不老の存在となり天の定めた決まりに従って統治を行う。” 
 古代中国をイメージする世界の物語です。2002年にはアニメになりNHK・BS、続いてNHKで放映されました。現在までに9つのエピソードが出版されていますが、スタートのお薦めはエピソード1の「月の影 影の海」上下2巻でしょうか。

 2冊目は、「第3次世界大戦はもう始まっている」(文春新書)です。
 この本はロシアのウクライナ侵攻を受けて、エマニュエル・トッドが初めて見解を述べたものです。侵攻1か月後の3月23日に収録され文芸春秋に掲載された記事(第1章)に、過去の記事(2章、3章)と、新しく4月20日に収録された第4章「ウクライナ戦争の人類学」を加え6月に発行されているので、現在の戦況は反映されていません。
 タイトルもセンセーショナルですが、帯もセンセーショナルなコピーが並んでいます。「米国は“支援”することでウクライナを“破壊”している」、「戦争の原因と責任は米国とNATOにある」、「ロシア経済よりも西側経済の脆弱さが露呈するだろう」。アンチ米国?・アンチEU?のトッドらしい主張ですが、歴史人口学者/家族人類学者ならではの視点とデータの前に、不愉快に思いながらもその主張を否定できないことに気づきます。
 トッドは現在の東西対立を「専制主義陣営vs民主主義陣営」の対立ではなく、「権威的民主主義陣営vsリベラル寡頭制陣営」の対立と捉えています。そして家族人類学者の面目躍如たるところですが、権威的民主主義の国々は父権性の強い国(パターナルな国)であると主張します。そして、パターナルな国は中露を含め、リベラル国家より多いと主張します。特に、アジアの大半の国は父権性の強い、即ちパターナルな国家です。
 現在、ベルリンの壁崩壊以来の歴史の転換点にあることは、異論がないと思います。どちらに転換するか正に正念場です。
 最後に、ウクライナの人たちに一日も早く平和が戻ることを祈るばかりです。

以上


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