サラリーマンOBが独自の視点で解説する
マーケティング入門
第3回 マーケティングの定義
個人会員 金野 成男
“マーケティング”、仕事をしていれば毎日のように聞くポピュラーな言葉ですが、説明するとなると難しいですね。また、営業との違いは何でしょうか。それでは、マーケティングの定義を見て見ましょう。
1)広辞林電子辞書;
「消費者の求めている商品・サービスを調査し,供給する商品や販売活動の方法などを決定すること で,生産者から消費者への流通を円滑化する活動。」 結構長いですね。
2)日本マーケッティング協会;
「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動。」 何言っているか、もっとわからない。3)経済学者のフィリップ・コトラー;
「マーケティングとは、個人や集団が、製品および価値の創造と交換を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセスである。」学者の言葉は難しい。
マネージメントの父“ピーター・ドラッカー”はどう言っているでしょうか。2011年にベストセラーになった岩崎夏海の小説「もしドラ=もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」のドラッカーです。マーケッティングに関連した彼の言葉を並べて見ます。
「事業注)の目的は顧客の創造である。
したがって事業は二つの、二つだけの基本的な機能だけを持つ。
それがマーケッティングとイノベーションである。
マーケッティングとイノベーションだけが成果をもたらす。」
「真のマーケッティングは顧客からスタートする。即ち現実、欲求、価値からスタートする。」
「我々は何を売りたいか』ではなく、『顧客は何を買いたいか』を問う。」
「『我々の製品やサービスで出来ることはこれである』ではなく、『顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである』と言う。」
「マーケッティングの目的は、顧客を知り、より理解し、顧客に商品やサービスを適合させ、自然に売れるようにすることである。」
「マーケッティングの理想は、販売を不要とすることである。マーケッティングが目指すものは、顧客を理解し製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。」
注):上田惇夫訳エッセンシャル版「マネジメント」では企業と訳されていますが、事業の方が適切と判断しました。なお、原文はBusinessであり、文脈によっては企業と訳す方が適切と感じられる箇所もあります。)
私の定義は以下の通りです。
「マーケッティングとは、自社の強みを、顧客価値と擦り合わせする活動である。」
もう少しかみ砕いて述べると、
「マーケッティングとは、自社(の商品、サービス等)の“売り”がハマる市場を発掘し、その市場により適合するような商品やサービスを開発し提供するまでの一連の活動である。」
マーケッティングを営業だけのもの、商品を売る方策と考えている人も多いですが、このように事業(企業)においてマーケッティングは商品戦略、顧客戦略であり、経営そのものと言っても過言ではありません。
最後はこのほどトヨタ自動車社長退任を発表した豊田章夫氏がトヨタウェイについて述べた言葉です。マーケッティングにも通じる言葉です。
「フランスの3軒の歯医者さんの話を紹介します。
1軒目の歯医者さんは『世界一の歯医者』と看板を出しました。2軒目は『フランス一の歯医者』を出した。3軒目は、何といって出したか。『この町いちばんの歯医者』と看板を出した。その町の人たちにとって、どの歯医者が一番信頼されたか。
トヨタも同じ。トータルの販売台数をどれだけ宣伝しても、お客様は何も嬉しくない。トヨタの各事業体が、その町で一番信頼される会社、工場になることが最も望ましい」
次回は「顧客と価格」について考えて見ましょう。手法についても少し触れたいと思います。
(第3回終わり)
オマケ ドラッカーの言葉の原文です。(すべてではありません。)
There is only one valid definition of business purpose: to create a customer.
Business has only two-and only these two- functions: marketing and innovation.
The aim of marketing is to know and understand the customer so well,(that)the product or service fits him or her and sells itself.
以上