広報チーム 仲田 清・伊澤 俊夫
法人会員訪問第2回は破砕機専門メーカの株式会社ヘリオスさんです。
“「ごみは燃焼の前に破砕しなくてはならない」、今では常識となった考え方を初めて提案し確立したのがヘリオスです“(同社ホームページより)のキャッチフレーズの通り、廃棄物破砕機のパイオニアとして、全国各地の自治体を中心にごみ焼却処理施設、下水処理場、リサイクルプラントなどに様々な破砕機を納入しています。
破砕機で焼却前処理することでごみの大きさが均一になるため、燃焼効率が上げると同時に、炉内の温度管理をし易くし、ダイオキシンの発生抑制にも寄与します。
逗子の鉄工所の長男として生まれ 天文学者の道を進んでいた富野暉一郎氏が、父親の死で跡を継ぐことになり、研究者と経営者の二足のわらじで苦労する中、「どうせ会社を経営するなら下請けではなく、世の中に積極的に関われる業種のメーカに」と決心し、1973年に(株)ヘリオスを設立しました。
当時、都市ごみの焼却炉は多くが公称能力を達成できず、ごみの処理を巡って都市部ではいわゆる「ごみ戦争が繰り広げられるような状況でした」。そこで富野氏は「燃焼効率を上げるには破砕すれば良い」との独自理論から、破砕寸法を自由に設定できる剪断型破砕機を考案しました。とは言え何が入っているかわからないゴミ相手、理論通りにはいかず大変苦労し最初の5年間は売れなかったそうですが、初代の暉一郎氏、そして弟・富野養二郎氏(現会長、当会理事長)の2人の技術者社長と関係者の努力で現在の地位を確立しました。特に流動床焼却炉の前処理破砕機では日本ではトップシェアで全国300基以上の納入実績を誇っています。
今回、三浦市のヘリオス社事務所で林卓一社長からお話を伺いました。林社長は大学で中国文学を専攻し卒業後、大手家電メーカに入社4年目にして中国現法に出向し、2012年にヘリオスに入るまでの13年間を北京⇒上海と中国人に家電を営業されていたそうです。利にさとい中国人相手の営業と聞いただけで、身の引き締まる思いがしますが、最初の仕事が債権回収、最後の3年間は上海の赤字部門の立て直しと、波乱に満ちていたと想像される中国での仕事を、淡々と楽しそうに話されていました。特に上海の3年間は経営する力を付ける上で経験になったそうです。その後叔父様の富野養二郎現会長の後を継いで2018年に社長に就任されました。
同社事務所は、三浦市のど真ん中、ベイシア三浦に近接した住宅地域の中にあります。これは、創業以来 工場を持たないファブレスメーカの道を進んできた同社ならではの立地と言えます。求人的には厳しそうですが、条件をフレキシブルにすることで、スキルを持った女性の、都心に出る時間はないけれども働ける場として、意外と穴場だと林社長は笑っていました。同社のIT担当もそういった地元の女性だそうで、確かに同社のホームページは必要な情報にアクセスしやすく洗練されていると感じました。
ヘリオス社の事業形態の特徴は大きくは2点あります。
第1点は工場を持たないファブレスメーカであることです。アップルなどのIT産業では当たり前ですが、機械 特に破砕機のような過酷な運転条件の機械でファブレスを実現するまでには創業者以来の、技術の蓄積と製作企業との協力関係の構築において不断の努力があるものと考えられます。
2点目は、特別な販売網無しに三浦半島の南端から全国に破砕機を販売できていることです。
林社長によると、同社の営業パターンは大きく2つのモデルに分けられるそうです。 第1のモデルはプラントメーカ経由での販売、地方自治体や公益法人の焼却設備等が該当します。メーカの仕様にスペックインされるなどのリピートオーダーが期待されます。
第2のモデルはバイオマスや食品メーカ等のエンドユーザーへの直販です。こちらはSDGs補助金で案件が増えているそうで、ホームページを見て連絡してくるところが多いとのことです。
林社長は「当社で営業は私一人だ。」と笑っていらっしゃいましたが、過去の実績だけでなく、上記の女性スタッフが作成したホームページから顧客の欲しい情報を提供できる仕組みなど、プル型営業の仕組みがしっかり出来上がっているようです。また、顧客特有の廃棄物に対応し、破砕実験のためのテスト機も設備しています。
また、高齢化に伴い大人用紙おむつ廃棄物の量が膨大になっており、同社では紙おむつ破砕機の開発実用化にも取り組んでいます。今後、社会構造の変化に伴い、廃棄物も変化し、環境規制も厳しくなることが予想されるなか、更なる技術開発と発展が期待されます。
(所感)事業形態の特徴として2点あると書きましたが、同社は中国のメーカもサプライチェーンに組み込んでいます。ファブレスだけでも大変なのに、それに海外が入ると、品質管理、納期管理と難しさが2乗になります。林社長曰く、今は材料の品質も上がり、メーカも仕事が多く熟練度が上がっており問題ないとのことでしたが、中国駐在13年の目利き力も大いに役立っていると想像されます。
以上