翻訳雑感-アルファベット熟語-

海外関連事業部会 仲田 清

 半年ほど前に神奈川県選出の英語が堪能な国会議員が、「最近カタカナ言葉が多すぎる。きちんと日本語に訳さないと意味が正しく伝わらない」との趣旨の話をしていましたが、カタカナどころかアルファベット3文字/4文字の略号が巷に溢れています。
 そこで問題です。最近日本の政治家の間で流行っている(?)4文字略語EBPMは何の略でしょう?
<答え> Evidence Based Policy Making=証拠に基づく政策立案。
 Episode Based Policy Making=逸話に基づく政策立案 の間違いではないかと言われそうですが、日本の政治もEpisodeからEvidenceへと転換しているなら良いですね。

 さて、アジアを取り巻く政治経済からアジアの国々を巡る3つの経済枠組みです。 

  1. TPP=Trans-Pacific Partnership agreement (環太平洋パートナーシップ協定)
    一般にはアメリカ離脱前の名称であるTPPと称しているが、現協定の正式名はCPTTP=Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-pacific Partnership (環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)または現加盟国数からTPP11と略称されています。現参加国のGDP合計は世界の10%になります。
  2. RCEP=Regional Comprehensive Economic Partnership Agreement(地域的な包括的な経済連携協定)アセアン10ヶ国と日中韓豪NZの15ヶ国が加盟。参加国GDP合計は30%です。
  3. IPEF=Indo-Pacific Economic Framework(インド太平洋経済枠組み)
    TPPに復帰できない(関税を下げる様な条約を議会が承認しない)米国がTPPに替わるものとして提案した緩やかな枠組み。上の2つはAgreement(協定・条約)で批准が必要なのに対し、Framework(枠組み)なので議会の承認なしで動ける。実効性には疑問がありますが、中国包囲網の中にインドを経済的にも取り込む意味合いが強いのでしょう。こちらのGDP合計は40%と、米国とインド、日本が入っているので規模は一番大きいですね。

 国際政治で有名な4文字略語は故安倍元首相が提唱したFOIPでしょうか。
 FOIP=Free and Open Indo-Pacific(自由で開かれたインド太平洋)構想、これに米国が乗ったことで中国の一帯一路構想に対抗する覇権争いの象徴的略語になりましたが、平易な単語の組合せで明快なメッセージを考えた人に感心します。
 FOIPの政治的な枠組みがQUAD、経済的な枠組みが上記IPEFでしょう。
 QUADは数字の”4”、即ち参加4か国を表す単語で、略語では有りません。でも、参加国が増えたらどうする? QUINT、HEX……
 ちなみに、アルファベット略語は英語ではAbbreviation 又は Acronym(アクラニム)と言います。

以上

 


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