翻訳雑感 その2 -翻訳と専門知識-

海外関連事業部会 仲田 清

 今から数十年前新入社員の時、設計に配属されてまもなく先輩たちからアメリカ機械学会の圧力容器規格翻訳の勉強会に誘われました。今なら日本語版も出版されていますが、当時は各社独自で訳していたようで、我々も分担して輪講で読み合わせながら翻訳して、最後は訳本を成果品にする予定でした。輪講も順調に数回廻った頃、一つの単語でストップしてしまいました。
 “STUB END???”。誰もが「stub(切り株)+end(端部)=切り株の端っこ???」と頭に?マークを浮かべながら数日過ごしましたが、何かの拍子にステンレス低圧配管などに使用する管継手のことではないかと思いつき、配管ハンドブックを調べて確認できた時は「蘭学事始」の杉田玄白の心境でした。食品プラントなどでは一般的な継手を化学プラント畑の我々は誰も知らなかっただけで、無知を晒した訳ですが、該当分野の専門知識が正確な翻訳に不可欠である好例(?)といえます。

 月日は流れ、台湾向けの装置の入札に参加した時の話です。入札に添付する技術仕様書を英訳することになりました。特殊な装置のため、日本語も英語も特有の単語が多く従来使っていた翻訳会社では無理と判断し、自分で訳すしかないと思ったものの、コマーシャル条件の詰めもあり、数十ページの仕様書を英訳する時間が取れませんでした。そこで偶々セミナーで知り合った美人社長の翻訳会社にダメもとで依頼することにし、どんな翻訳が上がって来るか修正の手間を考え戦々恐々として成果品を待ちました。ところが翻訳をチェックしてビックリ、技術用語も間違いなく、装置を完全に理解した翻訳が出来ていました。そこで美人の社長にお礼を兼ねて聞いて見ると、該当業界経験のあるオーストラリア人を捜してきて依頼したのだそうです。なるほどと納得するとともに、彼女の幅広いネットワークに感心しました。

 我が産業クラスター研究会のメンバーはネーティブではありませんが、様々な専門分野、業種、研究開発から設計、営業、企画、知財、海外駐在に至る業務経験と知識を有しており、翻訳においても幅広い分野でお役に立てると確信しております。

以上

 


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