エピソード:戦車の保管調査からスーパーの生鮮品担当に

個人会員 片平 悌一

 北欧、スウェーデン製の武器保管用除湿器の販売を担当したことがあります。今や悪者になってしまったアスベストですが、空気中の水分の吸湿・放出を簡単にできる特殊な性質を持っており、そのアスベストをハニカム状に固形化しシリカゲルを含侵させ、0℃近い低温でも連続して除湿できる優れた機械でした。

 関東に住んでいる者には考えられませんが、東北では冬場の方が、湿度が高く特に雪に降り込められると高湿度になることを聞きつけ、寒冷地の自衛隊では冬場の武器の保管をどうしているのか? 売込みを兼ね調査に盛岡一本木の自衛隊を訪問しました。

 戦車や大砲の砲身の内側を除湿することで保管が大変楽になり、いざ使用する時にはすぐに使えると売り込みを掛けました。(冬場の保管は砲身にグリスを塗り砲の両側を密閉する、又機関銃などはグリスの上から油紙で覆い保管し使用時にはグリスを除去することが必要でした。)

 ちなみに、この除湿器は北欧で武器を保管するために開発されたとダメ押しをかけたところ、幸い銃器ではなく弾薬庫の除湿に困っているとのこと、実際には八戸の駐屯地へ行けとアドバイスを貰い八戸へ飛びました。その結果、弾薬庫の実地テスト後受注に繋がりましたが、これがそれ以降10数年東北で暮らす原因になるとは……。

 八戸では駐屯地内に自衛隊官舎用のマーケットの建設が終盤を迎えていましたが、生鮮三品・野菜、鮮魚、精肉の担当が決まっておらず除湿器の購入を検討するから、こちらも手伝ってほしいとの依頼、早速帰京し上司に状況報告をしたところ直ぐにサポートしろとの命令、横浜の鮮魚市場から一人引き抜き八戸に転勤命令もないまま、とんぼ返りで単身赴任することになりました。

 それでも野菜は盛岡の市場から、精肉は岩手県畜産試験所の紹介で決まりましたが、魚介類が問題で八戸の鮫市場には“鮭・いか・鱈”それにホタテ貝しかなく鮮魚も盛岡の市場から仕入れることになり隔日の早朝に盛岡と八戸を往復することになりました。(ちなみに明太子を市場で注文したところ、さすが「東京の人は違う、明太子を知っている。」とはと驚かれました。当時明太子は入荷しておらず、私どもの注文で東京から取り寄せたとのことでした)

 2年後にカミさんと息子を呼び寄せましたが、幸いなことにカミさんの生涯の友人をこの地で得たのが救いでした。

 人生何事も塞翁が馬・・・どこに何が有るか解りませんね


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