外国人技能研修生の
3級技能検定受験をサポートして
海外関連事業部会 仲田 清
S工業所殿のフィリピン人実習生が昨年JISSUS溶接技量試験に合格した話を2月のメルマガに掲載しましたが、4月には同じくJIS溶接の今度は手溶接技量でも学科試験問題集の英文への翻訳と講義を通じて合格に貢献いたしました。 試験まで日数が短かったのですが、海外関連事業部会メンバーが総力を上げて翻訳を分担することでご要望に応えることができました。
さらに、今回1期実習生2名が3級技能検定を受験し合格しました。海外関連事業部会としては異例の日本語でのサポート、またコロナ対応の為、ZOOMでのオンライン講義と、初めてづくしのサポートとなりましたが、講師経験者など多彩なキャリアの産業クラスター研究会個人会員のお陰でお手伝いができました。
<外国人技能実習生の技能検定とは>
ご承知の通り技能実習制度は、発展途上国の人づくりに資するとともに日本の技能・技術・知識を出身国に移転し、母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とした公的制度です。実習生は実習の段階に応じて、1年目の1号(基礎級)、2-3年目の2号(専門級)、4-5年目の3号の3段階の資格が設けられており、そのレベルにかなう技能を習得したことを確認するのが技能検定で、合格すると次のレベルに進むことができます。
今回サポートしたS工業所殿の1期生のように3年目の3級技能検定に合格すると3号資格となり、更に2年在留期間が延長され、最大5年間の技能実習が可能となります(延長できない職種もある)。実習期間最後の5年目に2級技能検定を受けることもできます。また、実習生の技能だけでなく、実習生の待遇や実習計画等が審査され、実習実施者(今回の場合、S工業所殿)も優良であると認められる必要があります。
<技能検定の内容>
各級とも実技と学科で構成され、各々60%以上が合格です。言語は溶接技量試験と違い日本語のみです。基礎級を除き日本人と同じ中央職業開発協会の技能検定を受験することも可能ですが、外国人実習生向けに実習スケジュールに合わせた随時検定が用意されています。随時検定では問題の漢字にルビが振ってあり、外国人に優しい仕組みになっています。
<試験準備サポート>
S工業所社長殿より、溶接技量に続いて技能検定の学科受験準備も手伝ってほしいとのご依頼を受けました。不合格の場合は再試験が可能ですが、3年目の在留期限が切れる為一時帰国となり、今回はコロナの為再入国が難しく、実質一発勝負になる可能性が高いとの事でした。
海外関連事業部会として外国人への日本語受験サポートは経験が無く、二の足を踏みましたが、部会メンバーに相談した結果、実習生たちの将来の為にも出来るだけサポートすることとし、具体的方法の検討を行いました。
方法として、①原則日本語での授業で、英語は理解を助ける最小限とする。②マンツーマンで各々の進捗に合わせて講義をする。③教材は実習生が代々使えるよう工夫する。等々です。又ZOOMミーティングを利用することでコロナ対策、と時間と費用の節約ができ、今後の良い参考になりました。
5月上旬から実習生2名に対して分担して2カ月弱毎週講義を行い、上記の通り無事合格にこぎつけました。
<参考:技術実習制度から特定技能制度への移行>
外国人労働者の受け入れ制度として、今回の技能実習制度の外に2019年に始まった特定技能制度があります。これは実習制度と違い外国人材を労働力として受け入れる制度です。一定の専門性、技能を有することが条件で、技能実習2号以上の実習を良好に終了した外国人も必要な技能を有すると認められます。これは中小企業の最大の悩みである若手労働力不足を解決する一つの方策です。
S工業所殿は、ステンレス等の高級材配管製作・据付を専門とする高い技術力を持つ横須賀市の企業です。2年前に横須賀商工会議所殿のご紹介で、フィリピン人技能研修生への社内教育資料の英訳サポートをさせて頂いたのをきっかけに、今回の技能検定まで連続してお手伝いをさせて頂いています。