シリーズ 「デジタル思考で目指すDX」
シリーズ DX化を進めたいけれど その7
DX・デジタル研究会 伊澤 俊夫
このシリーズを2024年3月から始めて、2年が経過しました。当初の予定ではDX化の進め方を1年程度でまとめようと考えていました。
ところが、2022年に米国のAI研究機関 Open AIよって開発された文書生成AI「ChatGPT」が2023年に爆発的に広がり、日本語対応、無料ということで、活用が始まりました。マイクロソフトが巨額の投資を行い、Windowsと相性の良いAI「Copilot」を公開しました。これによって、一般企業の活用も急速に広がってきました。
世界的にみると、アメリカをはじめとして、IT、デジタル化の進んでいる国々で活用され、主要な企業では、文書生成AI機能だけでなく、自社の必要な機能として専用のAIを開発し、DX実現を目指しています。更に開発したアプーリケーションを業務・商品として、外販を始めている企業もあります。
1年以上間が空いてしまいましたが、DX化を進めるために、AIの活用は強力なツールとなることが、分かってきました。DXの進め方は、前回で紹介したように、総務省では、デジタル技術展開の姿を評価し、改革を加速すべく、下記のように定義しています。
- デジタイゼーション(Digitization)
定義:アナログデータをデジタルデータに変換すること。
例: 紙の書類をスキャンして電子データにすること。
目的: データの保存や検索を容易にし、効率化を図る。 - デジタライゼーション(Digitalization)
定義: デジタル技術を活用して業務プロセスを改善すること。
例: RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、手作業の業務を自動化
目的: 業務の効率化や生産性の向上を目指す。 - DX(デジタルトランスフォーメーション、Digital Transformation)
定義: デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業文化を根本的に変革すること。
例: 技術を駆使して新しいサービスや製品を開発し、市場に新たな価値を提供する。
目的: 競争力の強化と持続的な成長を実現する。
1.デジタイゼーションに取組む
デジタル化の進展に伴い、企業がどのようにデジタル技術を活用していくかを示しています。まずはデジタイゼーションから始め、次にデジタライゼーションを経て、最終的にDXを目指すという流れとなっています。
前稿で記したように、21世紀に入って、デジタル化、コンピュータ技術、高速通信技術の進歩によって、情報通信の世界は革命的変化を起こし、本来エネルギーのない情報(質量なし)が高速で大量・多様化により、社会に変化をもたらすエネルギーとなる。この情報の特に文書情報を扱う生成AIの活用は、人類の世界を変革する道具となっている。
今後、人間とAIのコラボレーションで、新しい文化を構築することとなるでしょう。
<デジタイゼーションのステップ>
- 現状の把握
- デジタル化の対象を選定
- 適切なツールの選定
- デジタル化の実施
- デジタルデータの管理:
<ITリテラシーの主要な要素>- 基本的なコンピュータ操作
- インターネットの利用
- デジタルセキュリティ
- データ管理
- ソフトウェアの利用
- 効果の評価と改善:
デジタル化の効果を評価し、必要に応じて改善を行う。
2.デジタライズに取組む
デジタライズの取組みについては、DX化の活動において企業の目指すところを形成していく重要な活動です。この活動を通じて、企業が目指す目的・目標を実現するところとなる。そのため、多様性・特徴のあるものとなるので、AI技術を活用する。
以下にChatGPTと活動のポイントを整理しました。
Ⅰ. デジタライズ段階での注意点
デジタル化が進むと、「ツール導入」に満足してしまう企業が多いですが、ここからが本番です。
- 目的を「効率化」から「価値創造」へ転換する
- × 書類をPDFにした
- × Excelで管理している
- 〇 データが“つながっている
- 〇 意思決定に活用されている
注意点
- 部門最適で終わらせない
- 「今のやり方をそのままシステム化」しない
特に日本の中小企業は、「紙をデジタルに置き換えただけ」で止まりやすい。
ⅱ.業務プロセスをゼロベースで見直す
デジタライズでは「今の業務は本当に必要か?」を問い直します。
例:
- 3重チェックは必要か?
- 承認印は必要か?
- 月次集計はリアルタイム化できないか?
ここで使えるのが、 - QC的な業務フロー分析
- ムダ取り
- 標準化
これがDXの土台になります。
ⅲ.データの質を整える(ここが最大の落とし穴)
AI活用以前に重要なのは、
- データの定義がバラバラ
- 入力ルールが統一されていない
- 履歴が残っていない
これではAIは使えません。 - データ辞書を作る
- 入力ルールを標準化する、入力形式を正規化する
- マスタ管理を整備する
ここを怠ると、DXは失敗します。
Ⅱ.AI活用をどう進めるか
AI導入で最も多い失敗は「とりあえずChatGPTを入れる」です。AIは段階的に進める必要があります。
【AI活用 3段階モデル】
第1段階:個人業務の生産性向上(低リスク)
対象:
- 議事録作成
- 提案書たたき台
- マニュアル草案
- 翻訳
- 文章校正
👉 まずは、“個人の時間創出”、これはすぐ始められます。
第2段階:社内データ活用AI
対象:
- 過去クレーム分析
- 見積精度向上
- 不良要因傾向分析
- 設備故障予測
ここで重要なのは、
✔ データが整っていること
✔ AIをブラックボックスにしないこと
第3段階:ビジネスモデル変革
例:
- 予知保全サービス化
- データ販売
- 顧客分析による新提案
ここまで来て初めて「DX」と言えます。
Ⅲ. 中小企業で特に注意すべきポイント
- ITベンダー依存にならない
「丸投げ」は危険です。 ベンダ-は運用者ではないことを意識することが重要。
必ず社内に、
• 業務理解者
• データ責任者
を置くこと。
- セキュリティと情報管理
生成AI利用時は、
• 機密情報入力禁止ルール
• 社内ガイドライン整備
• ログ管理
が必要です。
- 高齢社員への配慮
AIは「置き換える」ものではなく「補助する」ものと伝えることが重要。
恐怖感を取り除くことが成功の鍵です。
Ⅳ 推奨する進め方(中小企業支援向け)
- STEP1 : 業務棚卸しワークショップ(紙に書き出す → 業務フロー図)
- STEP2 : ムダ・重複・属人化の可視化
- STEP3 : データ整理と標準化
- STEP4 : 小さなAI活用実験(例:クレーム分析、議事録自動化)
- STEP5 : 成果の見える化(時間削減、品質向上数値)
Ⅴ 本質的に重要なこと
DXとは、IT導入ではなく、「意思決定の質を上げること」 です。AIはそのための“高度な統計ツール”と考えると理解しやすい。
- 統計的品質管理
- TQM
- 改善活動