住友重機械工業(株)現場見学訪問記

 台風15号で延期になっていました住友重機械工業株式会社の見学会を下記の通り行いました。
 住友重機械工業(株)様は台風15号でドックに水が浸水するなど甚大な被害を被り、見学会を延期していましたが、受け入れ態勢が整ったので見学会を実施しましょうというご好意があり実施することができました。

・日時  :2019年11月28日 14:00~17:00
・見学先 :住友重機械工業(株)横須賀製造所
・見学内容:住友重機械工業マリンエンジニアリング(株)造船部門、住重フォ-ジング(株)

 参加者は法人会員、一般企業、個人会員 合計23名。小雨降る生憎の空模様でしたが造船部門の見学は構内が広いこともありマイクロバスで工程順に巡回。 防寒着、ヘルメット、軍手、ワイアレスイヤホンを着用して暖かく,快適に,分かり易く見学ができました。
 造船所では横須賀市内のどこからでも見ることができるゴライアスクレ-ンをまじかに見上げ、また 特別なご配慮をいただきドック内を見学。建造中の11万トンタンカ-を舳先から仰ぎ見ましたが、皆さん声もなくただただ圧倒されました。

 横須賀製造所は追浜造船所として1971年にオープンしました。現在は広い敷地と立地を生かし、造船だけでなく住友重機械製品群の主力製造拠点の一つとしてスパンを広げています。
 今回の見学会でも、造船部門の他、精密鍛造品工場を見学。同工場では産業用、航空機用の精密鍛造部品を製造しており、特にチタン合金・ニッケル合金が使用されるジェットエンジン用鍛造タービンブレードは日本唯一の供給メーカーで、世界を飛ぶ航空機のジェットエンジンに使用されているとの説明がありました。

 見学会後の質疑応答では多数の質問が出て活発な質疑応答の時間となりましたが、残念ながら時間切れ。皆さん満足のうちに帰宅の途につきましたが、参加の皆さんから次の感想をいただきました。

 会社概要説明と丁寧に質問にお答えいただいた小平所長様、見学会の事前打合わせや当日の段取りと現場説明をいただいた総務・施設管理グル-プの甲木課長様に大変お世話になりました。

                                           (産官学連携支援部会 佐々木 興吉)

住友重機械工業殿見学会概要説明風景
住友重機械工業殿見学会概要説明風景

 以下に参加者各人の感想をご紹介します。

MA氏の感想

 台風15号で被害を受けられ今年度の見学会は無理ではないかと内心慮っていましたが、住友重機械工業様のご配慮で実施できましたことをまず感謝申し上げます。
 当日は、空模様もどんよりとして暗い中ではありましたが、ワイヤレスイヤホンや防寒服などをご用意していただくなどのご配慮もあり、気分としては明るく楽しい見学をさせていただきました。
 
 私は、現役時代、コンピュータのOSの開発をしてきました。これは、出来上がったものの姿さえも目で見ることはできません。その中でも制御中枢部の開発が大部分であったため、作ったものの動きさえも直接把握することはままならないありさまでした。さらに、開発・製造工程の大部分はオフィスの机に座っての作業です。また、最後の方では、実機を使ったテスト工程さえもパソコンを使って机上でテストできるようになってきました。
 
 そういう体験を重ねてきたせいか、こういう製造現場を見学して第一に感じるのは、規模の大きさ・広さというものであり圧倒されました。
 それから、計測機を使って検査の自動化・ディジタル化をされていたものがありましたが、現役時代に苦労してきたせいか感動しました。テストや検査等の自動化・ディジタル化ができると、結果的には工程の短縮に繋がり、かつ検査結果の自動集計も図れるので、品質の向上にも寄与するのではないかと思われます。

TH氏の感想

 造船部門で印象的だったことは2点あります。
 一つは全長240m、排水量11万トンのタンカーの鋼板の厚さが23mmしかないとのこと。タンカーを卵とすると、殻どころか薄皮のようなもので荒海を航行していることになります。
 もう一つは鋼板を船体のカーブ形状に曲げる作業は木型を当てて熟練工が行っている点です。溶接工程もそうですが、時間をかけて優秀な人材を養成する企業の取り組みに感心しました。
 
 また、鍛造プレスで真っ赤に熱したチタン製のブレードを3人1組で加工する様子は、とても迫力がありました。                     

HT氏の感想

 小平所長より住友重機は多角経営、基礎先進技術開発に力を入れ進化しているとの説明があった。次にTPSを導入し大幅な原価低減と在庫削減、及び工程再構築を行い、空スペースで新規事業を展開している、との説明があった。その後工場でその実態を見学し、ここに至るまでの長年の大変なご苦労が拝察されました。
 
 特に感銘を受けたのは、受注船を11万トンに限定、それを工程設計とJITを駆使しスリムな流れを構築し、徹底的な原価低減と品質向上を計ったことである。
 このモジュール化技法(ブロック工法)が設計部門だけの改善から、製造、営業システムまでの一体となったシステムを構築したことに感銘を受けました。
 さらに興味を持ったのは、厳しい造船業界にあって生き残りをかけて、このモジュール化が今度どの様な進化を遂げるのか、ということです。あえて言えば(素人ですが)、このブロック工法はまだ進化の余地があるのではないか、もし船台作業の流速が大幅に短くなると、革新的経営価値を生み出すのではないかと感じました。
 
 次に感じたことは、工場内の人が少ないこと、立ち話をしている人は無く、皆作業をしているか、速足で移動している。さらに通路等で出会った人の目の色が生きている。
 住友重機械工業(株)は生きている会社だなと直感的に感じました。大変勉強になりました、ありがとうございました。

 YT氏の感想

 大変勉強になる工場見学の企画・実行に当たった産官学部会の人達及び仲田様また、当日見学を受け入れていただいた住友重機械工業の皆様に感謝申し上げます。
 
 横須賀で、世界に向け造船・精密鍛造品等供給基地になって誇りにできるものづくりをしている事業所があることをうれしく拝見しました。
 
 造船所では、巨大タンカーの製作工程を見学し、パッケージを製作し、熔接して巨大タンカーが出来上がること、また巨大クレーン(300トン)はパッケージつり上げに使用されていることを理解できました。
 また熔接技術が大変重要であることも分かりました。通常では見学できない巨大タンカーの船底を見ることが出来たのも特別の配慮と感謝します。
 
 中國や韓国との価格競争が激しくなり、横須賀事業所に新事業導入のため、造船所の敷地をトヨタ生産方式で見直し、敷地を2/3に圧縮し、1/3の敷地を生む出したこと。素晴らしい成果だと思います。
 
 発電やジェットエンジン用ブレード等精密鍛造品の製造現場を初めて見学した。人手が欠かせない方法で製造されていたのは興味深かった。ジェットエンジン用ブレードは横須賀事業所が日本唯一の供給基地とのこと。横須賀から世界に供給されている誇りにして良い製品と思う。もっとPRして良いと思います。
 
 説明はなかったが、パンフレットを見ると環境対策に力を入れていることが分かった。CSR活動の一端と理解しました。


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