季節:彼岸花

個人会員 奧谷 出

 彼岸花は、秋の彼岸ごろ、突然に花茎を伸ばして鮮やかな紅色の花を開花する。名前はそれに由来する。

彼岸花
「華麗」が似合う彼岸花 (『Wikipedia』彼岸花より引用)

 別名の曼珠沙華(マンジュシャゲ)は歌にも歌われ、サンスクリット語で「赤い花」「葉に先立って赤花を咲かせる」という意味から名付けられたといわれている。サンスクリット語 manjusaka の音写であり、『法華経』などの仏典に由来する(『ウィキペディア』)。

 花姿は優雅で、法華経で天上の花という意味がある。

  突き抜けて 天上の紺 曼珠沙華 (山口誓子『自選自解句集』)

 空の青と地の赤の対比が美しい句であるが、天上の花の影響を受けているのであろう。誓子は、この頃、病気療養中であり鬱々としたものを抱えていたとされているが、そんな中でも「誓子」本来の句が見られるようになったといわれる(https://haiku-textbook.com/tsukinukete/)。
 
『万葉集』に見える「いちしの花」を彼岸花とする説がある。

  路のべの壱師の花の
      灼然(いちしろ)く人皆知りぬ我が恋妻は
                 (柿本人麻呂『万葉集』11・2480)
【路のほとりの壱師の花のように、はっきりと人はみんな知ってしまった。私の恋しい妻を】

 彼岸花は、子供のころ、水田の畔やお墓でよく見た記憶がある。
中国原産で有史以前に伝来したといわれ、日本では、水田や墓地に人為的に植えられたとされる。
 いずれも、彼岸花が有毒植物であることによるが、田の畔に見られるのは、畔や水田に穴を掘って水漏れを起こさせるモグラ・ネズミ・虫など、水田を荒らす動物がその毒を嫌って避けるようにするためとされる。
 墓地の場合、虫除けおよび土葬の時代には、死体が動物によって荒らされるのを防ぐためとされる(『ウィキペディア』)。
  
  彼岸花 風にそよぎて 墓並ぶ 作者不明
【秋風に揺れる彼岸花が、墓地に咲き誇る。亡き人々への想いが、風に乗ってそっと語られるような情景。静けさと哀愁が漂う光景が鮮やかに描かれており美しい句。(Microsoft CopilotのAI解釈)】

  峠越え あと一息よと 曼殊沙華 四国遍路の味い人― 仲田清
【4年ほど前、四国遍路の43番明石寺から大洲、内子を過ぎて、久万町の44番大宝寺に向かう峠の急坂に咲いているのを見て詠んだものという。 気持ちが素直に仮託されている】

 あなたの記憶の中で、彼岸花が咲いていた場所はどこですか。

名所

 彼岸花は、日本では、北海道から南西諸島までの全国各地で見られる。

 日本の名所としては、

 o 巾着田(埼玉):高麗川沿いに広がる真紅の絨毯
 o 羽黒山公園(宮城):15万本が丘を染める「彼岸花の里まつり」
 o 常泉寺(神奈川):白花も咲く“花の寺”、河童像とともに秋景色を彩る

が知られている。全国的には下記がよさそう。リンクしてお楽しみください。

彼岸花(曼珠沙華)の名所ランキング!東北から九州まで徹底紹介! – 東京寿園

 横須賀では、阿部倉のしょうぶ園が名所として知られており、はまかぜ新聞によると、赤色を中心に、白やピンクの花色も見られ、5,000株はあるという。